ヒメユリの育て方
ヒメユリ(姫百合;L.concolor)は、
日本をはじめ、中国や朝鮮半島北部、
アムール地方などに自生するユリです。
日本では、北は東北地方から南は九州まで、
幅広い地域に自生しています。
分布する地域によって開花時期や、球根の形状や性質、
草丈などが異なり、いくつかの種類(変種)に分けられます。
一般的な性質としては、草丈は30cm~1mで、
主な開花時期は6~7月です。
東京周辺では、6月に開花します。
花は径5cm~8cmほどの橙赤色の星形の名前の通り愛らしい花を、
数輪~10数輪、上向きに咲かせます。
球根は小球性で、分球するものとしないものがあります。
■ヒメユリの変種
・ミチノクヒメユリ
東北地方の山地に自生します。
草丈が40cm~50cmと低く、葉が5~10cm程度と短く、
密につくのが特長です。
球根は円錐形で、通常3球に分球します。
6~7月頃、赤橙色の星型の花を咲かせます。
・チョウセンヒメユリ
朝鮮半島や中国、ウラジオストク付近に分布します。
開花時期が早く、朱色の花を咲かせます。
草丈が高く、つぼみに綿毛が生えるのが特長です。
また、球根は分球しません。
・キヒメユリ
名前の通り、明るめの黄色い花を咲かせる自生の変種です。
花の大きさは、直径5cm程度と小さいです。
・トサヒメユリ
四国や九州地方に自生し、その名の通り高知で多く見られます。
開花時期が遅く、1本の茎に10数輪の濃淡のある赤い花を咲かせます。
草丈は1mほどになります。
球根は分球しません。
■栽培ポイント
1.日当りと水はけよく管理します
2.肥料切れに注意します
3.アブラムシと葉枯病が発生しやすいです
■ヒメユリの育て方
さまざまな変種のあるヒメユリですが、基本的な作業は同じです。
・栽培環境
ヒメユリは葉枯病を発生しやすいため、
高温・多湿を嫌い、夏涼しく乾燥する土壌を好みます。
日当りがよく、腐植質に富んだ水はけの良い土壌で育てます。
・植え付けと元肥
植え付け適期は10月です。
球根は、球根腐敗病の原因となる、
菌類(カビ)の一属であるフザリウムなどの防除のため、
ベンレート水和剤やダコニール等の溶液に、
30分ほど球根を浸して殺菌してから植え付けます。
植え付け場所は、あらかじめ1㎡あたり1握り程度の、
苦土石灰をまいて酸度を調整しておきます。
その後、元肥として1㎡あたりバケツ1杯の腐葉土と、
100gの緩光性化成肥料をまき、よく耕します。
球根の2~3倍の深さに植え付けたら、
たっぷりと水やりをします。
◎鉢植えの場合
鉢は、大きめで深い鉢を準備します。
小さめの鉢では、養分や水分を吸収する上根が十分に張れず、
球根が十分に肥大できず、翌年の花が期待できません。
初心者は、プラスチック鉢より、
水と温度上昇の管理がしやすい素焼きの鉢の方が良いでしょう。
鉢底網を敷き、ゴロ土(日向土大粒)を鉢の1/3の深さまで入れ、
その上に用土を鉢縁から3~4cm下まで入れます。
用土は、赤玉土(中)3:赤玉土(小)3:腐葉土4の割合でよく混ぜ、
緩効性化成肥料を用土1Lあたり3~5gくらい加えて、
よく混ぜて準備しておきます。
球根は、球根の2倍の土がかぶるくらい深植えにします。
株間も、球根の2倍以上とりましょう。
逆に、来年のための球根を育成せず、
1年限りの花を楽しむつもりなら、
小さめの鉢に3球くらい、芽をやや外向きに、
球根が隠れるくらいの深さで浅植えで植え付けます。
浅植えにすることで、上根の伸長を抑え草丈も抑えられ、
コンパクトに仕立てられます。
球根は殺菌液から取り出した後、乾かないうちに植え付けます。
植え付けたら、たっぷり水を与えます。
・水やり
庭植えの場合は、長期間乾燥が続かない限り、
基本的に水やりは必要ありません。
鉢植えでは、土の表面が乾いたら、たっぷり水やりをします。
冬期間でも、球根が乾かない程度に水やりをします。
・追肥
春になり、芽が出たら、緩効性化成肥料を1株あたり10g程度、
株の周囲にばらまきます。
花後もお礼肥として、同様に施します。
鉢植えの場合は、液体肥料を2週間に1度、
8月中旬まで水やりがわりに施します。
・植え替え
ヒメユリの植え替えも、10月が適期です。
茎葉が枯れてから、球根を掘り上げます。
ユリの球根は乾燥に弱いため、掘り上げたらすぐに植え替え、
球根を長時間露出して乾燥させたり、日に当てないようにします。
古い茎は、捻りながら引っ張ると取れます。
茎を取ったら、球根についている古い用土をきれいに洗い流します。
分球する場合は、手で分けます。
上根は茎と共に除きますが、下根は付けたままで植え付けます。
植え付け直後の球根は、養分や水分をまず下根で吸収するため、
健康な下根がついていることが大切です。
殺菌以下の作業は、植え付けと同様に行います。
■植え付け後の管理
植え付け後は、風通しと日当りの良い場所に置き、
鉢土の表面が乾いたら、たっぷりと水やりをします。
乾燥を防ぐため、鉢土の表面を腐葉土や
水ゴケなどで厚く覆うと良いでしょう。
ヒメユリは光を好むので、真夏の西日を除いて、
じゅうぶん光に当てるようにします。
生育期間中は肥料切れに注意します。
春になり、芽が出てきたら、
液体肥料を2週間に1度、水やりがわりに与えます。
液肥は、8月中旬まで施します。
錠剤タイプの緩効性化成肥料を施す場合は、
7号鉢に3個を目安に、3ヶ月ごとに置きます。
・病害虫
ヒメユリの病害虫としては、
アブラムシと葉枯れ病が発生しやすいので、要注意です。
特にアブラムシはウイルス病を媒介します。
発生を認めたら、早めに殺虫剤を散布します。
アブラムシは雑草にも寄生しているので、
こまめに草取りをするよう心がけましょう。
■花後の管理
花が咲き終わった後の花がらは、子房の下から手で折り取ります。
花がらを摘むことにより、種子が結実して養分が取られるのを防ぎます。
また、病気を防ぐ効果もあります。
花がらを摘む際は、ハサミなどの器具を使用すると、
ウイルスを伝染させてしまうことがあるので、
消毒したハサミを使うか、手で折り取ります。
■実生で育てる
ヒメユリは、ほかのユリと異なり、
上手に育てると実生でも2年目には花を咲かせるので、
タネを取るのも面白いでしょう。
タネを取る場合は、花がら摘みは行いません。
花を楽しんだ後、花弁が開ききった頃に柱頭に花粉を付けます。
1輪で80粒ものタネが取れることもあります。
タネを育てると、タネの方にも栄養がまわるため
球根の肥大が悪くなりますが、
それでも翌年も花を咲かせることはできます。
*ヒメユリのお写真は、
「季節の花 300」さまにお借りしました。
http://www.hana300.com/