ユリの増やし方
ユリは、品種によっても異なりますが、
実生、鱗片、分球、木子、珠芽(むかご)による繁殖、
鱗片培養などの方法で増やすことができます。
■実生で増やす
野生のユリは、自然界ではオニユリを除いて、
タネで繁殖=種子繁殖しています。
園芸品種も、タネができることがあります。
ただし、園芸品種の場合は、複雑な交配によって作り出されているため、
タネを植え付けても、必ずしも親と同じ花を咲かせるとは限りません。
種子繁殖の場合は、ユリの大敵であるウイルス病を、
親株から受け継がないという利点があります。
また、交配によって新しい品種を作り出すことが、
できるという楽しみも大きいです。
ユリの種まきの適期は、10~11月とされます。
しかし、ユリのタネには、タネを秋にまくと翌春本葉が出る「地上発芽型」と、
タネまき後、夏の高温期を過ごした後に地下で発芽し、
いったん地中で小球根を作り、冬の寒さにあたってから地上に芽を出す、
「地下発芽型」があります。
地上発芽型にはテッポウユリやタカサゴユリ、リーガル・リリー、
イワトユリ、ヒメユリなどがあげられます。
地下発芽型には、2~6ヶ月で発芽する「地下速発芽型」と
17~18ヶ月もかかる「地下遅発芽型」に分けられます。
地下速発芽型には、クルマユリやエゾスカシユリ、カノコユリなどがあり、
地下遅発芽型には、ササユリやオトメユリ、サクユリ、ヤマユリなどがあります。
地上発芽型のタネは、一般的な草花と同じように植え付けても良いですが、
地下遅発芽型のタネは、湿らせたバーミキュライトなどと一緒にポリ袋に入れて、
その中で地下発芽させる方法が一般的です。
■鱗片で増やす
鱗片で増やす=鱗片繁殖は、ほとんどのユリで行うことができます。
ユリの球根はたくさんの鱗片が集まってできていますが、
この鱗片を1枚ずつはがし、土に挿すと小さな球根が形成されるため、
この小さな球根を生長させ、大きな球根に育ててから栽培する方法です。
花を咲かせるような球根になるには3~4年かかりますが、
比較的簡単に親株と同じものを大量に増やすことができるので、
種苗会社などで広く行われている繁殖方法です。
鱗片繁殖は、8月下旬~9月中旬が適期です。
大き目の球根を準備し、
できるだけ根元まで取るようにして、はがしていきます。
はがした鱗片は、チウラム・チオファネートメチル水和剤で消毒します。
挿し床に、鱗片の半分~2/3が土に隠れるように、
3~5cm間隔で挿し、たっぷり水やりをします。
挿すときは、鱗片の上下を間違えないように注意します。
用土は、肥料分の少ない水はけの良い土を用います。
バーミキュライトなどの挿し木用用土を用いると良いでしょう。
半日陰で管理し、表面が乾いたら水やりをします。
2~3ヶ月経つと、鱗片の切り口に小さな球根ができてきます。
■分球で増やす
「分球」とは、文字通り球根がいくつかに分かれることです。
分球で増やす=分球繁殖は、効率はよくありませんが、
誰でも確実に簡単に増やすことができる繁殖方法です。
分球繁殖は、ユリの植え替え時に行うと球根を乾燥させずにすみます。
ユリは分球しにくい植物で、球根が小さい間は分球しないものが多く、
栽培を重ねて球根が大きくなると、分球しやすくなります。
掘り上げて分球する場合は、まず、上根は切り取り、
下根も枯れているものは取り除きます。
次に球根を分割しますが、
このとき、できるだけハサミは使用せず、手で割るようにします。
また、分割する時に根盤部が分割した各々に残るように注意します。
分割した球根は多少いびつですが、生育には影響ありません。
親株がウイルス病などに侵されていると、球根も
侵されているため、消毒してから植え付けましょう。
分球繁殖の利点は、植え付けた翌年には花が楽しめることです。
分球繁殖は、コオニユリやリーガルリリーなどで適しています。
■木子(きご)で増やす
木子(きご)とは、球根のすぐ上の茎につく、
小さな球根のようなものです。
木子は芽も根もついている
木子で増やすことを木子繁殖と言います。
10月中旬から11月上旬が木子の植え付け適期です。
球根を掘り上げて植え替える際、ていねいに茎から取り外して、
普通の球根と同様に栽培すると、2~3年目に花をつけます。
木子も、親株がウイルス病などに侵されていると、
ウイルス病などを引き継いでしまうため、消毒してから植え付けます。
木子繁殖は、カノコユリやヤマユリ、ハイブリッド系のユリで適しています。
■珠芽(しゅが)で増やす
珠芽(しゅが)とは、茎の葉の付け根にある腋芽が大きくなって、
小さな球根のようになったもので、「むかご」とも呼ばれます。
珠芽で増やすことを珠芽繁殖と呼びます。
むかごでの増やす適期は、6月中旬から7月中旬とされています。
ある程度の大きさになった珠芽は茎から簡単に外れ、
球根のように植え付けて栽培すると、やがて開花しますが、
3~4年の時間が必要です。
親株がウイルス病などに侵されていると、
珠芽も侵されているため、消毒してから植え付けましょう。
珠芽のできるユリは少なく、オニユリやサージェンディアエ、
バルビフェルムくらいです。